萩「蔦さんってえらいですよねー、文句一つ言わず葵さんの言うこと聞いててさー。おれならぜってームリだわー」
蔦「…………」
萩「おれ、思ったことがすぐ口に出ちゃうタイプなんで、ぜってー無茶振りされた時点でキレちゃいますよー」
蔦「…………」
萩「逆によくキレねーよなーって思うぜー。やることむちゃくちゃじゃないっすか、あの人」
蔦「…………」
萩「蔦さん、葵さんが何言っても全然動じませんよねー。それどころか、虫が出てきても平気そうだしー…怪談もビビんねーし…怖いものとかないんですか?」
蔦「…………」
萩「……ねーんだろーなー、蔦さんのことだから」
蔦「…………」
萩「おれは怖いものだらけっすよー。虫もキモいし……とくにムカデ!」
蔦「…………」
萩「足がいっぱいあるのがムリなんすよー。蜘蛛も……。虫ってなんであんなに足生えてんすかね、いらなくないすか?」
蔦「…………」
萩「四本足でいいっすよね、哺乳類みてーに! それならまだ好きになれるかも……や、でもやっぱ、あの生物感のねー瞳も無理なんですよねー」
蔦「…………」
萩「正直触るのもイヤだし…なんかカブれそうじゃないですか、触ったら」
蔦「…………」
萩「でも蔦さんはこの前Gが出てきた時も全然ビビらずにやっつけてましたよねー! ちょーカッコ良かったっす!」
蔦「…………」
萩「なんつーか、蔦さんってホントいつも堂々としてて、動じなくて、カッケーっつーか……」
蔦「…………」
萩「……どうしたらおれも蔦さんみたいに、何事にも動じない、クールな感じになれますかねー?」
蔦「…………」
萩「……つって、やっぱおれには無理だよなー! おれ、どんくせーし、ビビりだし……」
蔦「……私は、葵様のお役に立てずに死ぬのが怖いです」
萩「…え?」
蔦「萩様が思われるほど、私は完璧な人間ではありません。ご期待に添えず、申し訳ございません」
萩「あ……いやいやそんな…! おれのほうこそ、なんか…勝手に理想を押しつけちゃって……すみません」
蔦「…………」
萩「…………」
蔦「…………」
萩「あ……あのさ…一個、聞いていい?」
蔦「……なんでしょう」
萩「な、なんで蔦さんって、そんなに葵サンのことが好き…?なんですか…? 正直、あの人にそこまで入れ込む理由が分かんねー…っつーか……」
蔦「…………」
萩「あ、いやいや! これは別にその、貶してるとかじゃーなく……」
蔦「救ってくださったからです」
萩「は? えっと…」
蔦「葵様は、暗闇の底にいた私を救い出し、いるべき場所とやるべき仕事を与えてくれました。何もなかった、空っぽだった、私に……」
萩「え、えー…と…?」
蔦「……すみません…。話りすぎましたね」
萩「えっ? いやいや全然……ってか、むしろもうちょっと詳しく聞きたいくらいっつーか……」
蔦「いえ……じきに職務に戻らねばなりません。そろそろ、葵様が遊び疲れておやつを所望される頃合いでしょうから」
萩「え…ええ……? そんなガキみてーな……」
葵「蔦ー!!!!! お腹が空きましたわー!!!!!」
蔦「ただいまお持ちいたします…! ……萩様、それでは失礼いたします」
萩「あっ、あー、はい……お達者で…」
萩「……やっぱすげーよなあ。蔦さんって…」